「1995年夏から、我々が地力を信じてやってきた、このナンバーガールの歴史を、今ここに終了する」

そんなMCが象徴的なラストライブ、2002年11月30日、札幌PENNY LANE(ペニーレーン)のライブを以て解散したナンバーガール(Number Girl)。

わずか7年の活動で多くの邦楽ロックファンに衝撃を与え、多大な影響を与えた彼らに対し、「なぜ解散したのか?」と疑問に思う後追いファンも多いはずです。

クドカンこと脚本家の宮藤官九郎氏はナンバーガール15周年に際し、解散時点ですでに彼らの音楽は完結していたという旨のコメントを寄せています。

今回は、クドカンに「完結していた」と言わしめるナンバーガールが、2002年に解散した理由をその後の音楽性から考えてみました。

※なお、記事のゴールは解散した理由の犯人捜しではありません。ナンバーガールの完結と、今なお第一線で活躍するメンバーがどのように音楽的に分岐したかを知る手がかりとしてお楽しみください。

ナンバーガールは2018年のマンガ『ロッキンユー!!!』にも影響

前提ですが、ナンバーガールが解散から15年経った今でも愛される、すばらしいバンドである根拠について考えてみました。

少年ジャンプ+で連載中のマンガ『ロッキンユー!!!』を読むと、その理由が少しわかるかもしれません。

 

社交的で特に自分を持たない高校生の主人公が、ネクラでオルタナ好きな軽音楽部の生徒の演奏する『透明少女』を聴いて衝撃を受けるところから作品が始まります。

2018年になって今更ナンバーガール……と思うかもしれませんが、オルタナティブ・ロックの本質が垣間見える作品です。

「キモいヤツだからロックをやっている」というセリフにしびれる『ロッキンユー!!!』は電子書籍で読めるので、お時間ある方はぜひ読んでみてください。

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ナンバーガールのメンバーと略歴

福岡県福岡市で1995年に結成し、7年間のキャリアを駆け抜けたナンバーガール。

まずは、メンバープロフィールと略歴を見てみましょう。

向井秀徳(Gt&Vo)

金属的なギターサウンドと独特な世界観の歌詞が特徴の眼鏡のギターボーカル。

所有ギターはフェンダー・ジャパン・テレキャスター

現在はZAZEN BOYSやKIMONOS、向井秀徳アコースティック&エレクトリックなどで活動しています。

田渕ひさ子(Gt)

独特のフレージングでナンバーガールの世界観に奥行きを作る紅一点のギタリスト。

所有ギターはフェンダー・ジャズマスター

現在はtoddle、Bloodthirsty butchers、LAMAで活動しています。

中尾憲太郎(Ba)

直線的かつルードなベースラインで、変則的なダウンピッキングをするパンク系ベーシスト。

解散後はSLOTH LOVE CHUNKSやSPIRAL CHORDでベースを担当。

現在はCrypt City、ART-SCHOOLのサポートメンバーとして活動するほか、MASS OF THE FERMENTING DREGSなどのプロデューサーも務めています。

アヒト・イナザワ(Dr)

童顔ながら叩きこむような高速乱打が特徴のドラマー。

解散後はZAZEN BOYSに加入したほか、BEYONDSやLuminous Orange、おやすみホログラムのサポートドラムを担当していました。

また、VOLA & THE ORIENTAL MACHINEのギターボーカルでも活動しています。

ドラマーとしてのアヒト・イナザワの魅力を紹介した記事を書きました。

アヒト・イナザワの魅力って結局なに?

97の世代

ナンバーガールは、東芝EMIから1997年にデビューしました。

多くの邦楽ロックが1997年にデビューしたことから「97の世代」と言われています。

先日ご紹介したスーパーカーやくるり、トライセラトップスらとは同世代のバンドです。

詳しくは以下の記事でまとめました。

97の世代(ナンバーガール・くるり・スーパーカー)を振り返る

ナンバーガールが解散した理由(公式発表)

ナンバーガールが解散した理由について、公式で以下のように発表されました。

ベースの中尾憲太郎氏が「自分のやりたい音楽がある」と言い、残った3人やスタッフが話し合った結果、「中尾、田渕、イナザワ、向井の4人でナンバーガールである」という結論に至ったそうです。

これがナンバーガールの解散理由と発表されています。

ナンバーガール解散後の音楽性

ファンの中には、「音楽性の違い以外の原因があるのではないか」と疑う方もいるかもしれません。

ここからは、初期ナンバーガールと解散後の各メンバーのバンドを比較しながら真相を探っていきましょう。

初期ナンバーガールの音楽性

初期ナンバーガールはハードコア・パンクのテイストが強いオルタナティブ・ロックです。

彼らの概要を知りたい方は以下の記事でまとめましたのでこちらをご覧ください。

ナンバーガールとはどんなバンドなのか?【邦楽ロック必修科目】

ナンバーガール/透明少女

ナンバーガール/タッチ

初期ナンバーガールと比較されたバンド

初期ナンバーガールがよく比較されたのはピクシーズやソニックユースでした。

どちらも1980年代中期から1990年代初期に活躍したオルタナティブ・ロックバンドです。

2バンドと比較される理由は管理人が考察したので、以下の記事よりご覧ください。

ナンバーガールとピクシーズの共通点

ナンバーガールとソニックユースの共通点

さて、ここからがナンバーガールの解散に関する本題です。

向井秀徳

新たな音楽性の模索を目指し、中期ナンバーガール以降はダブやレゲエ、ヒップホップに接近。

『TOKYO FREEZE』や『NUM-AMI-DABUTZ』では、バンドサウンドにとらわれない音響処理やラップを加えました。

 

ナンバーガール解散後も向井秀徳の音楽性は広がり続け、ヒップホップやダブに加え、変拍子を多用するマスロック的なアプローチも増えていきます。

向井秀徳氏が幼い頃から好きと公言するプリンスなど、ファンクやディスコの影響を感じる瞬間も少なくありません。

ZAZEN BOYS(ザゼン・ボーイズ)

まず聴いてほしいのはこの1曲です。

ZAZEN BOYS/Honnoji

3拍子+2拍子の変拍子に、ディレイを掛けたエフェクティブなカッティング・ギターのリフ。

そして、『本能寺で待ってる』という歌詞の繰り返しは、サイケデリックかつ前衛的です。

星野源氏はジャンルでくくれないと発言していましたが、一般的にはマスロックと捉えるのが妥当でしょうか。

 

次はこちら。

ZAZEN BOYS/自問自答

「くりかえされる諸行無常、よみがえる性的衝動」という向井節の炸裂する歌詞。

ジャンル的にはヒップホップやダブに分類されると思います。

アヒト・イナザワ

解散後は向井秀徳氏とともにZAZEN BOYSでの活動を開始しました。

しかし、テンションの不一致やモチベーションの低下からバンドを脱退します。

その後、ギターボーカルとして始めたのがVOLA & THE ORIENTAL MACHINEです。

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE(ボラ・アンド・ザ・オリエンタル・マシーン)

ニュー・ウェイヴないしポストパンク、2000年代中盤にディスコ・パンクとカテゴライズするが妥当でしょうか。

恣意的な解釈かもしれませんが、アヒト・イナザワもZAZEN BOYSのような実験的な音楽性には前向きだったと思われます。

したがって、後期ナンバーガールの楽曲には肯定的だったと考えてよさそうです。

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE/Turning Turinng

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE / Flag

田渕ひさ子

解散後はギターボーカルとしてtoddleを結成しますが、ポップなオルタナティブ・ロック~ギター・ポップ路線にシフトしました。

また、bloodthirsty butchersに加入していることも考えると、エモコアへの関心も強いのかもしれません。

脱退の旨を直接伝えたメンバーではありませんが、後期ナンバーガールの音楽性とは乖離があったと考えられます。

作品づくりやバンドへのモチベーションという点は不明です。

toddle/ Branch in the Road

bloodthirsty butchers/デストロイヤー

中尾憲太郎

「自分のやりたい音楽がある」と、ナンバーガール脱退の意思を表明したメンバーです。

ここで考えたいのは、「中尾憲太郎氏がやりたかった音楽性は何か」ではないでしょうか。

ナンバーガール解散後の彼のバンド活動を見てみましょう。

Sloth Love Chunks/ Loveless ideals

ATTA BELTERSのKAYO嬢やキウイロールのog氏らと始めたバンドです。

キュートでポップなのにハードコア・パンクのテイストも強く、初期ナンバーガールのような疾走感と清涼感を感じさせます。

 

さらに、彼はタケバヤシゲンドウ氏(ex.COWPERS)らとバンドを結成しました。

SPIRAL CHORD/NEW TRUTH

初期~中期のナンバーガールが持つ殺伐とした雰囲気や初期衝動がありながら、よりハードコア・パンク的で男臭さを増した音楽性と言えるのではないでしょうか。

なお、Cowpersはeastern yotuhやbloodthirsty butchers、キウイロールと並び、2000年前後の札幌ハードコアバンドの代表格でした。

彼らの名はナンバーガールの解散ライブのMCでも登場します。

 

さらに、現在活動しているCript Cityもハードコア的な音楽性は損なわれていません。

このバンドは、オルタナティブ・ロックまたはジャンク・ロックに分類されるようです。

Cript City/Killer gene

影響下のバンドは多数

ナンバーガール解散後も各メンバーは第一線で活躍し続けていますが、短期間の活動ながら多くのバンドにも影響を与えました。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONやBase Ball Bear、Cinema Staffに凛として時雨など、錚々たるバンドが彼らのフォロワーである旨を公言しています。

詳しくは以下のページにまとめたのでご覧ください。

ナンバーガールの影響を受けたバンド9選

ナンバーガールは2002年に解散したから美しい

さまざまなジャンルの音楽を雑食的に吸収し、進化を続けてきたナンバーガール。

その後のメンバーの音楽的変遷を考えると、2002年で解散したのが妥当なのかもしれません。

むしろ、あの時点で活動が止まったからこそ伝説的な存在になったと考えられます。

 

管理人を含め再結成を待ち望むファンも多いと思いますが気長に待ちましょう。

(2018.08.25追記)夏の魔物2018 in TOKYOでの再結成はありえるか?

2018年9月2日(日)開催予定の夏の魔物フェスで、「ナンバーガールは復活するか?」「ナンバーガール再結成か?」と、話題になっています。

確かに、後日発表される謎の出演者Xの存在や出演の並び、フォントのロゴなど、ナンバーガール再結成を思わせる要素がちりばめられているように感じました。

出演順に紹介します。

・向井秀徳アコースティック&エレクトリック

・田渕ひさ子

・ART-SCHOOL(中尾憲太郎氏所属)

・おやすみホログラム×アヒト・イナザワ

ただ、このライブでナンバーガールが再結成するのはシナリオとして弱い気がします。

夏の魔物フェス自体も宣伝的に仕掛けるタイプなので、復活はないのではないかと、管理人は感じました。

 

ちなみに、夏の魔物とナンバーガールのロゴフォントの件は以下の記事でも取り上げました。

ナンバーガールのロゴのフォント

 

現時点ではどちらに転がるかわかりませんが、いずれにしても出演者Xが楽しみです。

(2018.09.25追記)夏の魔物の顛末

夏の魔物2018 in TOKYOですが、出演者Xは「羊歯大明神 ミチロウ復活祈願バンド」でした。

ナンバーガールの復活を期待していた人からすると、残念な結果かもしれません。

ただし、SNS上の反応を見ると「こんなタイミングでの再結成は望まない」という意見も見受けられました。

多くのファンも「ナンバーガールが復活するならいい形で」と考えているのだと感じます。