1990年代初頭、マイ・ブラッディ・バレンタイン(my bloody valentine)の影響を受けたバンドを中心に、シューゲイザーと呼ばれるジャンルのバンドが多数登場しました。

深いディレイがかかり強烈に歪んだディストーションギターとウィスパーボイスのボーカルの音楽は、一躍ブームになります。

今回は、1990年代に人気になったシューゲイザーバンドをまとめ形式でご紹介します。

シューゲイザーとは?

まずはシューゲイザーとはどんなジャンルかをご紹介します。

命名の由来

ムース(Moose)というバンドのボーカルが曲の歌詞を覚えられず、足元に歌詞を貼ってある歌詞カードをライブ中に読んでいた姿が「靴を見つめる人」に見えたとする説が一般的でしょう。

つまり、靴(shoe)を凝視(gaze)という意味です。

また、足元に置いてある無数のエフェクターを操作することに夢中になっていたという説もありました。

シューゲイザーというネーミングは後付けで、当時はハッピー・ヴァレー(テムズ・ヴァレー)と呼ばれることが多かったようです。

この表現、テムズ川周辺のアートスクール出身のバンドが多かったことに由来しており、リアルタイムのリスナーにはハッピー・ヴァレーのほうが通じやすいと思います。

 

なお、管理人は「靴を見つめる」くらい内向性な音楽性は、シューゲイザーというジャンルのネーミングと相性がよいと感じています。

最大の特徴はギターノイズ

ディレイやリバーブ、コーラスなどのエフェクターを多数使い、どこまでも鳴り響くようなディストーションギターをかき鳴らすのがシューゲイザーの特徴です。

 

また、シューゲイザーバンドの多くはフェンダー・ジャガーやジャズマスターを使っていました。

シングルコイルピックアップの軽いギターサウンドにディレイを掛けて思い切り歪ませるため、独特の浮遊感があるのでしょう。

 

さらに、テンションコードや変則チューニングを多用しており、調性がわかりにくい曲も少なくありません。

これもシューゲイザー特有の浮遊感や陶酔感の秘密です。

 

こうした点から、シューゲイザーはサイケデリック・ロックのリバイバルと呼ばれることもあります。

実際にマイ・ブラッディ・バレンタインを始め、サイケデリック・ロックのザ・ベルベット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)に影響を受けたバンドは少なくありません。

ささやくようなウィスパーボイス

シューゲイザーのボーカルは、基本的にささやくようなウィスパーボイスです。

ライブはともかく、音源で絶叫するタイプのシューゲイザーバンドというのは基本的に居ません。

ささやく程度のボリュームで、ポップなメロディを歌うのがシューゲイザーの特徴と言えます。

男女混声ボーカル

必ずしもそうではないので定義するとややこしくなりますが、シューゲイザーは男女混声ボーカルのバンドが多いです。

ベルベット・アンダーグラウンドの1stアルバム、あるいはジーザス&メリー・チェイン(The Jesus&Mary Chain)の1stアルバムか、ソニックユース(Sonic Youth)を目指しているのかもしれません。

いずれにせよ、男女混声であることで官能的な世界観が表現されていると思います。

ライド(Ride)

1988年、イギリス・オックスフォードで結成されたバンドです。

マイブラと同様、クリエイション・レーベルからリリースしていました。

1996年に解散後、ギターボーカルのアンディ・ベルはオアシス(OASIS)に、ドラムのローレンス・コルバートはジーザス&メリー・チェインにそれぞれ参加しています。

 

2014年に再結成し、フジロックフェスティバルなどで日本にも来日しています。

管理人も再結成後に生でライブを見ましたが、生で聴けて感動しました。

聴きどころ

まずは1stフルアルバム『No Where』収録の『Dreams Burn Down』をお聴きください。

ゆったりとした16ビートと強烈なディストーションギター、深いディレイのかかったギターリフ、アーミング奏法、ウィスパーボイスのボーカルと、シューゲイザーのクラシックを作り出しました。

楽曲によってはギターポップのニュアンスが強かったり、ビートルズの影響が強かったりと、正統派ブリディッシュ・ロックの系譜の位置づけのバンドかもしれません。

おすすめアルバム

1stアルバム『No Where』を選びました。

ライドはデビューe.pから2ndアルバムまでを指し、シューゲイザーバンドと呼ばれています。

個人的には2ndアルバム『Going Blank Again』収録の『Twisterella』も、ギターポップ色の強いシューゲイザー名曲のひとつです。

なお、3rdアルバム以降はビートルズ回帰が目立つので、別バンドと考えてよいでしょう。

ちなみに、ナンバーガールもライドの影響を受けていそうです。

詳しくは以下のページにまとめました。

水色革命とシューゲイザー

スロウダイヴ(Slowdive)

1989年、イギリス・レディングで結成されたバンドです。

クリエイション・レーベルに所属。

彼らも2014年に再結成しました。

聴きどころ

シューゲイザーバンドにくくられますが、歪みよりも美しい空間系のサウンドメイキングを得意としています。

ドリーム・ポップやアンビエント的な側面も強く、少ない歪みながら陶酔感のあるサウンドが聴きどころ。

後年、スロウダイヴのメンバーがエレクトロニカに移行していることも関係あるのか、エレクトロニカファンからの印象もよいそうです。

おすすめアルバム

2ndアルバム『Souvlaki』を推します。

1曲目『Alison』がとても好きでした。

1stアルバムよりもゴシック臭が抜けていて、透明感のあるサウンドにシューゲイザーの儚さを感じるのが個人的なポイントです。

スワーヴ・ドライヴァー(Swerve driver)

1989年、イギリス・オックスフォードで結成されたバンドです。

シューゲイザーには珍しい黒人ボーカルという点も異色ですが、時代やレーベルが違えばエモやグランジ扱いされていたのではないでしょうか。

クリエイション・レーベルに所属していました。

聴きどころ

『Rave down』は比較的シューゲイザー寄りの楽曲ですが、他のシューゲイザーバンドよりも硬質なギターサウンドが特徴です。

The Smashing Pumpikinsとツアーをしていましたが、管理人はスワーヴ・ドライヴァーはシューゲイザーよりオルタナティブ・ロックというくくりのほうが適切な気がします。

熱くて男臭いのに、シューゲイザーと言われれば「たしかに」と感じさせるサウンドメイキングを堪能してください。

おすすめアルバム

1stアルバム『Raise』を推します。

『Son of mustang ford』はクルマがテーマの歌ということもあり、シューゲイザーっぽさを感じないかもしれません。

ただ、マイ・ブラッディ・バレンタイン『Isn’t Anything』やソニックユース『Daydream Nation』からシューゲイザーを感じられる人には、ぜひ聴いていただきたい1曲です。

チャプターハウス(Chapterhouse)

1987年、イギリス・レディングで結成されたバンドです。

スロウダイヴのレイチェル・ゴズウェルをゲストボーカルに迎え、『Pearl』という楽曲も発表しています。

のちに紹介するペイル・セインツ(Pale Saints)も同様ですが、1 stアルバム『Whirlpool』が猫のジャケットということもあり、「シューゲイザーのアルバムジャケットが猫だと名盤になる説」を提案したいと思います。

聴きどころ

楽曲によっては空間系を活かしたサウンドメイキングや打ち込みをしているのですが、今回の動画はマッドチェスター寄りの楽曲です。

当時のイギリスの享楽的な音楽シーンを感じさせます。

おすすめアルバム

1stアルバム『Whirlpool』を推します。

アルバム全体の統一感は少し弱いのですが、『Breather』『Pearl』はシューゲイザーを代表する名曲2曲です。

なお、個人的には『Breather』のリフがサザン・オールスターズ『東京VICTORY』に似ていると感じます。

ザ・テレスコープス(The Telescopes)

1987年にイギリスで結成されたバンドです。

クリエイション・レーベルからリリースしていました。

ちなみに、2017年になぜか新譜を発売していて驚きました。

聴きどころ

シューゲイザーにくくられますが、ノイズ・ロックやサイケデリック・ロックの要素も強めです。

楽曲によってはマッドチェスター的なアプローチもしています。

動画の曲からはソニックユースの影響を感じますが、ザ・ヴェルベット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)的な音楽性を志していたという記録もあります。

ただ、このあたりはある種数珠つなぎ的に考えるとよいでしょう。

おすすめアルバム

実は、ザ・テレスコープスについては管理人はアルバム未聴です。

そのため、おすすめアルバムを紹介できません。

彼らについては『The Creation Records Compilation – Volume 2』というVHSのプロモーション・ビデオ集を高校3年生のときに購入し、それで聴いたのみだからです。

ブラインド・ミスタージョーンズ(Blind Mr.Jones)

1990年頃にイギリス・マーロウで結成されたバンドです。

シューゲイザーブームの末期に登場したため、セールス的には振るいませんでした。

しかし、レディオヘッド(Radiohead)のジョニー・グリーンウッドがゲスト参加した楽曲もあり、その手のファンにとってもレア度の高いバンドかもしれません。

スロウダイヴに見初められてチェリーレッド・レコードからリリースしたバンドです。

聴きどころ

正式メンバーにフルートがいるのは驚きですが、炸裂するギターノイズの上で鳴るフルートにはさらに衝撃を受けます。

マイ・ブラッディ・バレンタインもフルートの音を楽曲に取り入れていますが、生音でかなり主張が強いのがこのバンドです。

おすすめアルバム

管理人が唯一聴いたアルバムが『Spooky Vibes』(ベスト盤)です。

ブラインド・ミスター・ジョーンズはキャリアすべてにフルート奏者がいたわけではありません。

楽曲によっては普通のシューゲイザー、オルタナティブ・ロックです。

やはり、このバンドの魅力はフルートだと思います。

『Spooly Vibes』を中心にいくつか聴いてみてください。

ペイル・セインツ(Pale Saints)

1987年、イギリス・リーズで結成されたバンドです。

こちらは4ADからリリースしていました。

シューゲイザーバンドには珍しく3ピースかつベースボーカル(イアン・マスターズ)です。これは初期プライマルスクリームのようなギターポップを目指したことも影響しているかもしれません。

なお、日本のシューゲイザーの代表格、ルミナス・オレンジ(Luminous Orange)がペイル・セインツを敬愛しており、イアン・マスターズが楽曲やライブにゲスト参加しています。

聴きどころ

イアンの中性的なボーカル、楽曲によりますがチェーンソーのようなギターサウンドに痺れます。

変拍子やゴシック的な楽曲の世界観もおすすめする理由です。

2ndアルバム以降はラッシュの元メンバーが加入しますが、音楽性が少し変わってしまい、個人的には別バンドという印象です。

おすすめアルバム

1stアルバム『The Comforts of Madness』(邦題:狂気のやすらぎ)を推します。

アルバムタイトルがシューゲイザーという概念をうまく表していると思います。

『Language of flowers』を聴けば、透明感あるアルペジオとギターノイズの静と動やメロディセンスに感動するはずです。

ラッシュ(Lush)

1987年に結成されたイギリス・ロンドンのバンドです。

ゴシック的な世界観と空間を多用したシューゲイザー的なギターサウンドが強く、レーベルメイトのコクトー・ツインズ(Cocteau Twins)の影響を感じさせます。

聴きどころ

他のバンドと比べると、かなりメロディがはっきりしているようにも感じます。

女性ツインボーカルでルックスを打ち出していたこともあり、アイドル的な要素の強いバンドというのが管理人のイメージで、Strawberry Switchbladeのシューゲイザー版という感じで聴いていました。

おすすめアルバム

1stアルバム『spooky』をおすすめします。

ただ、管理人があまりラッシュをきちんと聴いていない(ギターノイズが弱い印象があったから)ので、あまりおすすめしていません。

コクトー・ツインズ好きな方はハマりやすいので、ドリーム・ポップ好きな方は一聴してみてください。

番外編:ジーザス&メリー・チェイン(The Jesus & Mary Chain)

1984年にスコットランドで結成されたバンドです。

1stアルバム『Psychocandy』収録の『Just like honey』は、気だるい男女混声ボーカルとフィードバックノイズのギターが特徴。

聴きどころ

シューゲイザーのくくりに入れるべきか迷いましたが、ジーザス&メリーチェインを聴いてシューゲイザーを始めたバンドも多く、先祖的な存在と言えます。

4thアルバム『Honey’s dead』では、ジザメリの影響下にあるマッドチェスターやシューゲイザーテイストを逆輸入的に取り入れたアルバムではないでしょうか。

おすすめアルバム

なんだかんだ言って、1stアルバム『Psychocandy』でしょう。

ノイズ・パンクとでも呼ぶべきジャンルだと思いますが、がならず気だるげに歌う点はシューゲイザー的です。

ある種のルーツ・ミュージック的な音楽としてお楽しみください。

 

ちなみに、初期スーパーカーがシューゲイザーバンドにくくられる要因は、中村弘二氏がジーザス&メリーチェインのファンである点も影響しているはずです。

なお、1stアルバム『スリーアウトチェンジ』の『Greenage』は、ジーザス&メリーチェインを意識した楽曲と言われています。

初期スーパーカーはシューゲイザーバンドなのか?

マイブラ以外のシューゲイザーバンドも聴いてみよう

今回ご紹介したバンドは、それぞれサウンドメイキングや楽曲の世界観が大きく異なります。

他にもゴス&ハウスとギターノイズが印象的なカーブ(curve)やグランジ色の強いキャサリン・ホイール(Catherine Wheel)など、当時活躍しながらも歴史に埋もれたシューゲイザーバンドは少なくありません。

 

あなたが思っていたシューゲイザーあるいはマイブラサウンドとは、まったく違うバンドもいるかもしれません。

ぜひ、クリエイション・レーベルと4ADを中心にいろいろなバンドを聴いてみましょう。