ナンバーガールのデビュー当時、ピクシーズ(The Pixies)と比較されることが少なくありませんでした。

メジャーデビューシングル『透明少女』のカップリングでは『WAVE OF MUTILATION』をカバーしており、ルーツという意見が多いのは自然なことです。

ただ、意外とピクシーズからの影響が少ない気もするので、共通点を考えてみました。

ピクシーズとは

1985年結成のアメリカのオルタナティブ・ロックバンドです。

のちにペイル・セインツ(Pale Saints)などを輩出するレーベル・4ADに所属。

メンバーの不仲で1993年に解散しますが、ヘヴィ・メタルやハード・ロックになじめなかった世界中のアーティストに影響を与えました。

なお、2004年に再結成し、活動を再開します。

メンバー

ギター/ボーカル:ブラック・フランシス(フランク・ブラック)

ベース&コーラス/キム・ディール

ギター/ジョーイ・サンティアゴ

ドラムス/デイヴィッド・ラヴァリング

ディスコグラフィ

1988年:Surfer Rosa(サーファー・ローザ)

1989年:Doolittle(ドリトル)

1990年:Bossanova(ボサノバ)

1991年:Trompe le Monde(トゥロンプ・ル・モンド)

2014年:Indie Cindy(インディ・シンディ)

2016年:Head Carrier(ヘッド・キャリア)

音楽性

ネガティブな歌詞とポップなメロディ、一癖ある楽曲構成にディストーションギターが特徴です。

フォーキーなAメロ・Bメロに対し、サビでブラック・フランシスが絶叫するボーカルスタイルは斬新なものでした。

また、今でこそ当たり前ですが、静と動の対比が斬新な楽曲構成は「ラウド・クワイエット・ラウド」と呼ばれ、オルタナティブ・ロックの代名詞になります。

ピクシーズのおすすめ曲

管理人は定番ですが『Debaser』をおすすめします。

Debaserとは「人間のクズ」のような意味で、ポップで明るいコード進行からは想像もつかないほどネガティブなタイトルです。

歌詞の内容は、「アンダルシアの犬」と名言しているうえで「眼球をスライスしたり……」と言っているため、シュールレアリズムの傑作映画『アンダルシアの犬』を扱っていると考えられます。

冒頭で少しお話した『Wave of Mutilation』もオルタナ色のあるポップナンバーです。

 

公式動画がYouTubeにありませんが、『Gigantic』もおすすめです。

ノイジーなギターかつ女性ボーカルが全面的に出ており、スーパーカー的なテイストを感じさせます。

ナンバーガールとの共通点

向井秀徳氏は「将来は禿げて太ってブラック・フランシスのようになりたい」と言っています。

私見ですが、露骨にピクシーズが元ネタと思われるような曲は少なく、ナンバーガールの世界観が全体的にピクシーズ的であるのかもしれません。

そこで、ナンバーガールとピクシーズの共通点を改めて考えてみます。

意味深な歌詞と絶叫系ボーカルスタイル

向井秀徳氏とブラック・フランシスは、ともに文学性の高い歌詞が高く評価されたポイントです。

ピクシーズは強姦や殺人、社会への反発などを歌いますが、ナンバーガールは東京という都市への無常観やどこか冷めた若者の姿がテーマ。

どちらも社会に対してメッセージ性が強い歌詞で、突然絶叫ボーカルになるのは似ているポイントでしょう。

ギターボーカルがテレキャスター

向井秀徳氏もブラック・フランシスもフェンダー・テレキャスター使いです。

ピクシーズが活動していた当時は、ハムバッカーを搭載したレスポールが主流の時代でした。

ハード・ロックやヘヴィ・メタルのバンドがスタジアムを埋めており、文学的なロックなどは見向きもされていなかったと思います。

 

そんな時代にテレキャスターを持ち、ロックンロールでもヘヴィ・メタルでもない音楽で鬱屈とした感情を表現するのはまさにオルタナティブ・ロック。

このあたりはナンバーガールがピクシーズと比較されるべきポイントかもしれません。

ギタリスト向けですが、テレキャスターがどんなギターかは以下の記事でまとめました。

⇒『テレキャスターは初心者が弾きやすいギター?』のページへ行く

轟音×ポップさの共存

向井秀徳氏もブラック・フランシスもハスカー・ドゥ(Husker Du)のファンのようです。

ナンバーガールでは『Pixie Du』という曲名で、ピクシーズはメンバー募集の広告に「ハスカー・ドゥとピーター・ポール&マリー(Peter, Paul and Mary)が好きなメンバーを求む」と書いていることからわかります。

 

ブラック・フランシスが好きと書いているピーター・ポール&マリーは、かなりおとなしいフォークグループ。

向井秀徳氏も長渕剛ファンを公言しており、フォークミュージックが好きと考えるのは自然でしょう。

両者ともにギターポップの色合いがありながらも轟音でパンキッシュな楽曲になる理由は、ルーツミュージックが似ているからかもしれません。

メンバー編成の男女比

ピクシーズ的な歌詞や狂気じみた歌唱スタイル、『SCHOOL GIRL BYE BYE』~『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』期のポップさと轟音の共存。

これらは、ナンバーガールがピクシーズと比較される理由として十分なはずです。

さらに、担当楽器は違うもののメンバー編成における男女比(男3:女1)が同じ点は、メディアの打ち出し方としてピクシーズを挙げた理由かもしれません。

 

オルタナティブ・ロックの大御所的存在・ソニックユースも同様のメンバー男女比です。

ナンバーガールを売り出すためのキャッチコピーとして彼らを持ち出すことで、ヒキがあったのかもしれません。

実は、当サイトではナンバーガールとソニックユースの比較考察も行っています。

⇒『ナンバーガールとソニックユースの共通点』のページへ行く

 

ちなみに、同時期に活躍したスーパーカーも同じ男女比でしたが、彼らの比較対象はジーザス&メリー・チェイン(The Jesus & Mary Chain)やマイ・ブラッディ・バレンタイン(my bloody valentine)です。

マイブラについて、詳しくは以下のページでまとめています。

⇒『My Bloody Valentine『Loveless』と機材・音作り』のページへ行く

彼らもグランジやオルタナティブ・ロック色が強く、ピクシーズに影響を受けたと公言していますが、絶叫要素がないことや軽薄そうな歌詞からシューゲイザーとして住み分けしていたのかもしれません。

初期スーパーカーをシューゲイザーバンド扱いするかは、以下の記事で詳しくまとめました。

⇒『初期スーパーカーはシューゲイザーバンドなのか?』のページへ行く

90年代オルタナティブ・ロックバンドはみんなピクシーズで育った

ここまでナンバーガールとピクシーズを比較してみました。

ただ、考えてみると、ピクシーズに影響を受けていない1990年代のオルタナティブ・ロックバンドのほうが少ないかもしれません。

 

たとえば、ニルヴァーナ(NIRVANA)のカート・コバーンはピクシーズの大ファンです。

世界中で大ヒットした『Smells Like Teen Spirit』は、ピクシーズの曲が元ネタになっていると言われています。

その真偽について、詳しくは以下の記事でまとめました。

⇒『Smells Like Teen Spirit / ニルヴァーナ(NIRVANA)の元ネタと考察』のページへ行く

 

その他、ウィーザー(Weezer)やレディオヘッド(Radio Head)、U2やブラー(Blur)などが影響を受けたことを公言しています。

ナンバーガールやスーパーカーのほか、the pillowsやART-SCHOOLなど、日本のオルタナティブ・ロックバンドの間でもピクシーズは人気です。

そう考えると、簡単にナンバーガールがピクシーズの楽曲に似ているというのは、少々野暮かもしれません。

もっとバンドの在り方や本質的なスタンスの部分で影響を受けていると考えるのが自然だと感じました。

オルタナティブ・ロックのルーツを一聴すべし

ピクシーズはオルタナティブ・ロックの源流的バンドです。

ナンバーガールを比較するのは、もしかしたらあまり意味のないことかもしれません。

どの曲が影響を受けていると深く考えず、ビートルズを聴くような感覚で楽しむのがよいでしょう。