「これねえ、もうひと言で言わしてもらいますけれども……青春なんですよね。すいません、青春です」

 

ナンバーガールのギターボーカル・向井秀徳氏がデビュー15周年の15th Anniversary Editionに際し、メジャーデビューアルバムに対してこのように発言しました。

そのメジャーデビューアルバムが、『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』です。

今回は管理人の好みたっぷりで全曲レビューします。

SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT


1999年7月23日、東芝EMIからリリースされたナンバーガールのメジャー1枚目のアルバム。

2011年10月26日、「EMI ROCKS ”The First”シリーズ」第1弾として再発売。

2014年5月21日、デイブ・フリッドマンのリマスターと、1999年8月11日に行われた下北沢CLUB Queでのライブ音源を加えた『School Girl Distortional Addict 15th Anniversary Edition』がUNIVERSAL MUSIC JAPANから発売されました。

【1曲目】タッチ

「殺・伐!」というアヒト・イナザワ氏(ドラムス)のカウントから始まる楽曲。

1音目から感じさせる独特のローファイ感は、メジャーレーベルからリリースされたとは思えないアンダーグラウンドな雰囲気です。

 

また、「自分の歌が前に出るのが恥ずかしい」という理由から、いわゆるポップミュージックと比較してかなりボーカルが小さいことも特徴。

このミキシングは向井秀徳氏が望んだものだと言います。

キックとベースの強い重低音、そして金属的なギターサウンドは、既存の邦楽ロックのテンプレートから大きく外れていました。

同時代のバンドと比較しても根本的なサウンドメイキングに違いを感じます。

 

「熱さを嫌う若者たちは冷え切った場所へ逃げていく」

「通じ合わないで/触れ合わないで/それでも奴等笑い合う/それでも奴等信じ合う」

という歌詞は、この時代特有の冷たさを象徴しているのではないでしょうか。

 

のちの向井節となる「冷凍都市の暮らし」の思想はここにあると思います。

【2曲目】Pixie Du

金属的で硬質なギターフレーズから始まる楽曲。向井秀徳氏が敬愛するオルタナティブ・ロックバンドのピクシーズ(The Pixies)、ハードコア・パンクバンドのハスカー・ドゥを組み合わせたタイトルです。

たった2分間ですが、耳を刺すような歪ませないギターサウンドは斬新ではないでしょうか。

 

「安吾ははっか煙草を吸いながら/猫の大群を見たりふらついたりさまよったり」

 

無頼派の小説家・坂口安吾の影響を受けた歌詞も注目です。

ナンバーガールがただのパンクロックではなく、向井秀徳氏が多読家であることに裏打ちされた文学性もはらんでいることが見て取れるでしょう。

【3曲目】裸足の季節

「P・U・N・K!」というアヒト・イナザワ氏のカウントから始まる楽曲。

駆け抜けるような疾走感があり、かきむしるような田渕ひさ子氏(ギター)のギターソロに衝撃を受けると思います。

暴力的なまでにパンクなサウンドはナンバーガールの魅力のひとつです。

【4曲目】Young Girl Seventeen Sexually Knowing

前作『IGGY POP FANCLUB』に通ずる、ミドルテンポで哀愁漂うインディーポップ感ある楽曲。

いわゆるBメロにあたる部分では、突然ギターノイズの嵐に突入します。

このあたりが、ソニックユースと比較される理由のひとつでしょう。

ナンバーガールの「少女」に対する発言だったり、のちにBase Ball Bearが『十七歳』という楽曲を発表したりするのは、本曲のタイトルのネーミングも少なからず影響しているように思います。

【5曲目】桜のダンス

「造反有利」というアヒト・イナザワ氏のカウントから始まる楽曲。

ギターリフの構造はアメリカのオルタナティブ・ロックテイストを感じさせます。

「私は海をだきしめていたい」という歌詞の一節は、前述の坂口安吾氏の同題小説があることから、あらためてルーツがわかるポイントでしょう。

【6曲目】日常に生きる少女

強烈なギターノイズから始まる楽曲。ライブの定番曲であり、管理人が思うナンバーガールの名曲のひとつです。

これでもかというほど詰め込んだスネアロールが聴けたり突然のギターノイズ展開になったりと、予定調和ではないワクワクが詰め込まれています。

 

前半の疾走感ある展開から一転、後半になると哀愁漂う展開に切り替わりますが、これがまたよい。

本サイトではこの曲をソニックユースと比較していますが、ナンバーガールが受けたであろう影響は以下の記事にまとめました。

⇒『ナンバーガールとソニックユースの共通点』のページへ行く

【7曲目】狂って候

「鋭・角!」というアヒト・イナザワ氏のカウントから始まる楽曲。

重いフロアタムとハードコア・パンクマインドを感じるシャウトは、本アルバム内で一番ヘヴィーな曲ではないでしょうか。

浅はかな表現ですが、タイトルの通りナンバーガールの狂気性を感じるはずです。

のちの『I don’t know』にも通ずるものがあると思います。

【8曲目】透明少女

金属的なギターコードから始まる楽曲。

これをダウンピッキングで弾き切る中尾憲太郎氏(ベース)には脱帽です。

 

ナンバーガールは詳しく知らない人でもこの曲を知っていることは多く、文句なしに代表曲のひとつと言えます。

1990年代のロックアンセムであり、ほとんどのバンドマンが一度は聴いているのではないでしょうか。

ナンバーガールのおすすめ曲でも取り上げています。

⇒『ナンバーガールのおすすめ10曲をランキング形式でまとめてみた』のページへ行く

 

余談ですが、管理人はこの曲を聴きながら福岡市博多区の親不孝通りを歩いたことがあります。

【9曲目】転校生

冷たいアルペジオから始まる楽曲。

2ndアルバム『SAPPUKEI』に通ずるジャンクで暗い要素もはらみつつ、初期ナンバーガールのポップさも残ります。

中期ナンバーガールから聴き始めた人は、この絶妙なバランスを好きになるかもしれません。

【10曲目】EIGHT BEATER

夏は暑い」という向井秀徳氏のセリフから始まる楽曲。

のちにZAZEN BOYSでもたびたび登場する「繰り返される諸行無常 よみがえる性的衝動」という向井秀徳氏の歌詞の初出はこの曲です。

ミドルテンポながら絶叫系のボーカルで、重々しい空気が漂うこの曲も中期ナンバーガールに通ずる世界観と言えます。

管理人個人は少し渋すぎると感じますが、意外とナンバガファンからは人気が高い曲です。

一度は聴いておきたいおすすめアルバム

メジャーデビューから3年半で音楽性が大きく変化したナンバーガール。

「おすすめアルバムはどれか?」と聴かれるたび迷います。

ストレートなオルタナティブ・ロックが好きな人なら、管理人は『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』を紹介すると思います。

1990年代の邦楽ロックにおける名盤中の名盤だと思うので、少しでも気になった人はぜひ聴いてみてください。