1990年代を代表するオルタナティブ・ロックバンド、ニルヴァーナ(NIRVANA)を一躍スターダムに押し上げた楽曲が『Smells Like Teen Spirit』。

当サイトでは『【TAB譜・コード付】Smells Like Teen Spirit~初心者おすすめの練習曲』にてご紹介しました。

 

『Smells Like Teen Spirit』は、多くの音楽批評家が90年代のロック・ムーブメントにおける重要曲と話しています。

今回はそんなロック史に残る名曲について、PVや楽曲の元ネタに対する考察、ニルヴァーナのギターボーカルのカート・コバーンが低評価を下す理由を考えてみます。

Smells Like Teen SpiritのPV

薄暗いオレンジ色の照明で、高校の体育館と思しき場所で演奏するニルヴァーナのメンバー。

どこか重々しくて閉塞感を感じさせるグランジらしいPVではないでしょうか。

 

このPV、1979年公開の青春映画『Over the edge~レベルポイント』が元ネタになったと言われています。

PVと映画の類似点ですが、最終的に生徒たちが高校を破壊しようとする点が似ているそうです。

 

ニルヴァーナのギターボーカルであるカート・コバーンのほか、ソニックユースのキム・ゴードンも人生に影響を与えた映画であることを公言しています。

 

ちなみに、親の価値観を否定し反抗するティーンたちが自らのコミュニティを形成し、閉塞感を打破しようとするストーリー。

若者が反抗する危険性があるという理由で、一時期テレビ放送が見送られたという逸話もあります。

 

なお、ニルヴァーナと大人への反抗という点です。

『NEVERMIND』のライナーノーツによると、ニルヴァーナのメンバー全員の両親が離婚していると言います。

アメリカに暗い影を落とすジェネレーションX(両親の離婚率が高い)世代であるという閉塞感は少年期のカート、そしてニルヴァーナに深い影響を与えているかもしれません。

『レベルポイント』は、そんな彼らの世界観に合致する映画だったのではないでしょうか。

Smells Like Teen Spiritの楽曲の元ネタ

2ndアルバム『NEVERMIND』のリリース時、カートがポップ・ソングを作ろうと考え、元々、彼が敬愛していたピクシーズ(The Pixies)の楽曲を拝借したと言われています。

元ネタとなった楽曲については諸説ありますが、ここで分析してみましょう。

The Pixies『Where is my mind?』が元ネタ説

まずは「The Pixiesの『Where is my mind?』をカバーしているとき、曲のイメージが完成した」というカートの発言をアテにしてみましょう。

リードギターのフレーズ、ヴァース(いわゆるAメロ)部分の雰囲気は似ているかもしれません。

パクリというには無理がありますが、この曲が参考になったと考えるのは自然な気がします。

The Pixies『U-Mass』が元ネタ説

Wikipediaにも記載ありましたが、「The Pixiesの『U-Mass』のリフをパクった」とする説も有力です。

確かに硬質でパンキッシュなリフやテンポ感は、通ずるものがあるかもしれません。

コーラス(いわゆるサビの部分)は、コードストロークの雰囲気も含めて元ネタになっていると考えてよいでしょう。

The Pixies『Debaser』が元ネタ説

次に、「The pixiesの『Debaser』に触発されて作った」というカートの発言があるようです。

冒頭4コードの進行は『Smells Like Teen Spirit』に通ずるものがあり、併せてメロディを歌うとなじむような気がします。

ただし、この曲だけが元ネタと考えるのは少し無理があると感じました。

Boston『More Than a Feeling』が元ネタ説

1970年代アメリカのプログレッシブロックを代表するボストン(Boston)の代表曲『More Than a Feeling』を元ネタとする説です。

0:43~のカッティングフレーズはなんとなく似たリズムに聴こえるかもしれません。

 

ニルヴァーナも、カートが『More Than a Feeling』のギターフレーズを弾いてから、『Smells Like Teen Spirit』に移行することがあったと言われています。

カート本人は、冗談交じりにボストンから影響を受けていると話したことがあるようです。

Blue Oyster Cult『Godzilla』が元ネタ説

1967年に結成したアメリカのハード・ロックバンドの代表曲『Godzilla』を元ネタとする説です。

0:19~のギターフレーズは『Smells Like Teen Spirit』と似ているかもしれません。

ただし、カートがふざけて影響を受けている旨を発言していることを考えると、実はあまり意識していないのではないかと考えることもできます。

Smells Like Teen Spiritの歌詞の元ネタ

『Smells Like Teen Spirit』の歌詞を読み解くにあたって、まずは2つ知っておくべきことがあります。

Teen Spiritというデオドランドと、作家のウィリアム・S・バロウズの存在です。

曲名の由来と元々の歌詞

1990年頃に活動していたグランジバンド、ビキニ・キル(Bikini Kill)のキャスリーン・ハンナから、カートが揶揄されたことが由来になっています。

 

「カートからティーン・スピリットの匂いがする(=このデオドランドを使っているビキニ・キルのトビ・ヴェイルと付き合っている)」という内容です。

英語にすると「Kurt smells teen spirit」という表現ですが、これをカートが気に入り、曲名になったと言います。

そのため、元々はガールフレンドだったトビ・ヴェイルに関する歌詞のようでした。

ウィリアム・S・バロウズの影響

意味がわかるようでわからない『Smells Like Teen Spirit』の歌詞のルーツは、1950年代のビート・ジェネレーション(ビートニク)を代表する作家、ウィリアム・S・バロウズが考えた小説の技法が影響しています。

バロウズは小説『ソフトマシーン』などでカットアップ(一度原稿に書いた文章や新聞などの文章をハサミで切って適当につなぎ合わせる)を使い、無意識が生み出した文章による小説づくりを試みました。

ビートニクを敬愛するカートはバロウズの影響を受け、カットアップによって歌詞を作ったと言います。

カート本人の『Smells Like Teen Spirit』に対する評価

カートは『Smells Like Teen Spirit』に対して否定的な意見を残しています。

多くのロック誌や音楽批評家、優れたアーティストたちが評価する一方、カートは俺たちの人生やシアトルを台無しにしてしまったという旨を述べているようです。

アンダーグラウンドなグランジ・バンドであるニルヴァーナがセルアウトした点が、楽曲に対するカート自身の低評価、ひいては彼がショットガンで自殺した原因ではないかと考えられています。

 

ニルヴァーナの1stアルバム『BLEACH』は低予算で制作されたローファイな作品でした。

しかし、『Smells like teen spirit』が収録されている2ndアルバム『NEVERMIND』は、非常にポップなサウンドに仕上がっています。

元々、カートはシアトルの片田舎でピクシーズやソニックユース、ビート文学を敬愛するアンダーグラウンドなシーンにいるバンドマンの一人だったはずです。

『NEVERMIND』におけるサウンドプロデュース、『Smells like teen spirit』の楽曲ができたいきさつを見ると、ロックスターになるために自らの魂を売ったことに抵抗があったのかもしれません。

この曲をきっかけにニルヴァーナが売れすぎたことに苦悩し、ライブで演奏することを拒否したりふざけて演奏したりしたこともあったようです。

 

事実、3rdアルバム『In Utero』はスティーブ・アルビニをプロデューサーに迎え、バンドが目指していたアンダーグラウンド志向に回帰します。

収録されている楽曲を見ても『Rape Me』や『tourette’s』など、タイトルや歌詞が問題視される作品ばかりでした。

当然『NEVERMIND』から入ったリスナーは拒絶反応を示したため、セールス面では振るわなかったアルバムです。

 

ただ、彼らにとってはこれでよかったのかもしれません。

カートは商業的音楽を毛嫌いしていたと言いますが、『Smells like teen spirit』の大ヒットにより自身が商業化したことに矛盾を感じていたのでしょう。

その結果、自らが作った楽曲をこき下ろしていたのだと思います。

90年代を代表する楽曲をあなたの解釈で聴いてほしい

『Smells like teen spirit』について複数の切り口から考察してみましたが、いかがでしょうか。

 

管理人は高校2年生のときに初めて聴き、パワーコードとカッティングのシンプルなギターリフに衝撃を受けました。

カートの苦悩について知る中で「『BLEACH』や『In Utero』のほうがかっこいい」と思う時期もありました。

 

皮肉なことにカート自らが命を絶つきっかけになってしまったわけですが、『Smells like teen spirit』はロック史に残る名曲の一つであることは間違いありません。

ぜひ、あなたの解釈で聴いてみてください。